◆二元対立の英語感覚◆ 《同内⇔外部》we と theyの違いをいえますか?


 英語という言葉にはいつも二元対立がつきまとっていると考えると、意外にも、私たちが見過ごしている英語のニュアンスが、つぎつぎと浮かび上がってきます。たとえば、次の文はネイティブスピーカーに奇妙に響きます。

☠ We don’t know what we have got till it’s gone.
自分が何を手に入れたかは、それを失ってみてはじめてわかる

「私たちは」というからには、上のことを信じないような「彼ら」がいることになってしまいます(私たち⇔彼ら)。むしろこの文でいいたいのは、おおよそ誰もが思い当たるような一般的な真理です。ということはweを使うのはまずいことになります。ではどうするかというと、You(複数です、単数ではありません)を使います。このYouは、(私たち⇔彼ら)という対立を超えて、<人々一般>のことです。この<人々一般>は、<私たちや彼らという大きな個別のグループ>に対立しています。

You don’t know what you have got till it is gone.  

We はいつも theyに対立していること、weあるいはtheyと文が主語になっていれば、その文では、weに属さないtheyがおり、またtheyに属さないweがいることになります。

ですからたとえば、「人間は環境に左右されるものだという人がいる」という場合、「左右される」という意見はあるが、自分自身はそうは思っていない、つまり人間は環境に左右されるものだと思っていないとすると、この文は

Some people think they are at the mercy of circumstances.

ところが、自分自身も環境に左右されると考えている場合には、

Some people think we are at the mercy of circumstances.

となります。

Youがこのように一般をさしているのがわかると、次の文も、「お前は税金を払え」といっているのではないことがわかります。

You should pay taxes by March 15 in Japan.
日本では税金は3月15日までに支払うことになっている。