◇愛のエンブレム◇ 117

AD EXTREMVM.

Quamdiu funis erit, tamdiu quoque flamma manebit,

Deficiente etiam fomite flamma perit,

Crudelis sic verus Amor nisi morte peribit,

Qui potis est vitâ deficiente mori.

終わりまで。

炎は、芯があるかぎり燃え続けるだろうが、

火種がなくなったときにだけ、消える。

同じように、本物のアモルは、残酷だが、死ぬときにのみ消え去る。

死ねるのは、生命がつきた場合のことだ。

まさに最後まで

 火のついたマッチは最後まで燃え続ける。

そのように恋人も、心の中で(まこと)の愛の火がひとたび燃え出すと、

そこで燃え続け、どこかに行ってしまうことはない。

恋の気持ちが本物かどうかは、いつまでも長く続くかどうかにかかっているのだから。


❁図絵❁

 アモルが海辺で遙か遠くを眺めながら歩いている。左手には輪に巻き付いた芯を持ち、その芯の先は燃えて、そこから煙がのぼっている。

❁参考図❁

レンブラント (Rembrandt)「ユダヤ人の花嫁」1665年頃

男性が、花嫁のために大きな金の鎖をその首から胸にかけ、そして胸に手をあてている。花嫁はその手に優しく触れている。女性の指には装飾の施された金の指輪が、そして腕には何重もの金のブレスレットが付いている。二人の愛は黄金が朽ち果てないように、長く続くのだろう。なお「ユダヤ人の花嫁」というタイトルは19世紀になって付けられたもので、この肖像画は夫婦を描いていること以外に、いまだに確定していない。


〖典拠:銘題・解説詩〗

典拠不記載:

典拠不記載:

▶比較◀

燃え続け…消える:「御垣守(みかきもり) 衛士(えじ)のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ ものをこそ思へ」(百人一首 大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ))。<大意>「宮中の諸門を守る衛士が警備のために使うかがり火が、夜は燃えて、昼は消えているように、私は毎日、夜は恋の炎が燃え上がり、昼は魂が消えるほど、貴女への恋の情に悩んでいることだ」。恋の炎は、衛士のたく火のように、夜の間は燃え続けるが、火が消える昼の時間には、心が消え入って自分の命が尽きるかと思われるほどに思い悩む。この歌では、愛の炎が日々絶え間なく燃えてはいるが、燃えてはいても消え入りそうになるという、不安定な揺れ動きが描き出されている。愛は、生命ある限り燃え続け、生命が尽きる時になって初めて消え去るというたえず激しく定常的に一直線に燃え盛っていない。恋の苦しさが、一瞬の途切れもなく、昼夜の移り変わりとともに絶えず持続しているのだ。


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