◇愛のエンブレム◇ 28

INCONCVSSA FIDE.

Lampson. Fallere nolle fidem, Gygis licèt annulus adsit,

Sic inconcussa dixeris esse fide.

Cicero.  In Amore nihil fictum, nihil simulatum, & quidquid in eo est, idem

verum & voluntarium est.

揺るぎない誠実さをもって。

ランプソニウス  たとえギューゲースの指輪が手もとにあっても、誠実を裏切ぎりたくはない――

それほどの揺るぎない誠実をもっていると、君は言えたことだろう。

キケロー            愛にはどんな偽りも、どんな見せかけもなく、そして愛があるなら何をするにも、自発的で心がこもっている。

愛は誠実さを必要とする

 愛はどんなことをするときにも、心は言葉になってあらわれ、

自分の顔を変装せず、こっそり姿を隠すこともなく、

ギューゲースの指輪もはめない。愛はそんなものではないのだ。

おのれの思いを打ち明けて、偽らざる好意をえる、これが愛だ。


❁図絵❁

アモルが正面を向いて、右手でギューゲースの指輪を掲げ、それを指にはめないことを堂々と示している。そして左足で仮面(欺瞞の象徴)を踏みつけ、そのようなものに自分は一切関与しようとしないことも示す。

❁参考図❁

ヘリット・ダウ (Gerrit Douw)「宴会の前で吹くトランペット奏者」(全体, 部分)1660-1665年

 トランペット奏者の背後では宴が開かれ、男女が楽しんでいる。そしてカーテンで隔てられた欄干のレリーフの左側では、アモルたちが仮面(欺瞞の象徴)をいじり、右側では山羊(快楽の象徴)と戯れている。


〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:参照「ゆるぎない信仰によって」(FIDE INCONCVSSA)(カーンブラァ[フランス北部ベルギー近郊]の大司教ルイ・ドゥ・ベルレモーンのモットー)。ただし語順が反対で、またfideの意味は誠実ではなく信仰の意味になる。

ランプソニウス:出典未詳。 キケロー:[➽5番]『友愛論』8章26節。ただし出典では愛 (amor) ではなく友愛 (amicitia) となっていて、男性同士の友愛のあり方についての説明になっている。

〖注解・比較〗
ランプソニウス: 〔1532年-1599年〕ブルージュの人文主義者、詩人、画家。フェーンの師匠で、芸術家伝記作家ヴァザーリと親交があり、ヴァザーリと同様に芸術家伝を著し、この伝記は何度も版を重ねた。エピグラムを中心とした詩作集が一編ある。
ギューゲースの指輪:リューディアの羊飼いで、身に着けると自分の体が消える指輪を偶然に発見した。この指輪の力を利用して、王妃と通じたのちに、妃と共謀して王を殺害し、自らリューディア王となった。参照プラトン[➽9番]『国家』2巻359D-360B[➽30番]。
『友愛論』:〔前46年〕16-17世紀において友愛を論じる際に必ず引用されるのがキケローのこの著作。真の友愛は欠点のない対等な人間同士においてのみ可能であるから、自分自身を磨いて徳を高め、真の友愛を持てるように努力せよというのが基本のメッセージ。この友愛観が、特に17世紀においては恋愛するもの同士、夫婦間にも適用されるようになっていった。

誠実:「葦の根の ねもころ思ひて 結びてし 玉の()といはば 人解かめやも」(万葉集 1324)。「葦の根のように、心をこめて大切に結んでおいたあの玉の紐だということができるとすれば、どうしてそれを他の人が解くことがあるだろうか」。真心をこめて誓った二人の仲なので、誰もそれを引き裂くことはできないというのが大意。なおねもころは、ねんごろの古形で、真心をこめてという意味。また玉の緒は、宝石を通す細い紐。


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