◇愛のエンブレム◇ 112

PRIMO DELECTAT, MOX VRIT.

Manè recens orto Titan delectat Eoo,

Vrit at in medio cuncta calore die.

Apul.               Flamma sæui Amoris paruo quidem primò vapore delectat:

sed fomento consuetudinis exæstuans, immodicis ardoribus, totos adurit homines.

最初はうれしくても、すぐに焼け焦げる。

(あけぼの)が昇り、早朝になったので、太陽はうれしくなるが、

真昼には灼熱となって焼け焦げる。

アープレーイウス           身を苦しめるアモルの炎は、そのとろとろと燃える熱で最初のうちは喜ばせるが、燃えるものが次々とそそがれると、灼熱(しゃくねつ)となり、どんな人間も焼け焦がしてしまう

最初は快く、後には痛々しく

   太陽が昇り始めるとうれしくなるが、真昼には

その熱が高すぎて焼け焦がすようになる。

恋も、最初のうちにはこのうえもなく大きな喜びであるが、

ぼうぼうと燃えだすと、喜びどころか苦痛となる。


❁図絵❁

 高台で東の空をじっと見つけるアモルは、丘の向こうから昇ってくる朝日にうっとりとしている様子である。

❁参考図❁

バルトロメウス・ファン・デル・ヘルスト (Bartholomeus van der Helst)「アーブラハム・デル・コートと妻マリア・ドゥ・キィ-ルセギエテル」1654年

 織物商の夫妻はビロードと絹のしっかりとした服で身を固めている。夫は妻を見つめ、妻は愛の印であるバラを掲げている。暑くもなく寒くもない薄曇りの庭園のなかで、二人の愛は身を焼け焦がすことがないのだろう。


〖典拠:銘題・解説詩〗

典拠不記載:

典拠不記載:参考 アイスキュロス「太陽の焼けつく炎に、身を焦がされ、肌の面の色も変えよう、また……夜が光を覆い隠す、その嬉しさもたちまちにして、(あかつき)の霜さえもまた、昇る旭に消されてしまう。」(『縛られたプロメーテウス』22-25行[呉茂一 訳])。

アープレーイウス:[➽16番]『黄金のろば』8巻2節。夫人カリテーを愛したならず者の若者が、カリテーの夫を殺害するに至った動機として述べられている言葉。カリテーはのちにこの若者が夫殺害の犯人と夢のお告げで知り、若者の目をえぐって復讐をする。

〖注解〗

:曙は曙の女神エーオースのことで、2頭の馬がひく凱車に乗って、東の天空の門を開いて出ていく。この女神に続いて、太陽神ヘーリオスが天空へと出ていく。

太陽:原文はティーターンで、これは巨人族の総称[➽フェーン氏への賛辞]だが、ここでは太陽神ヘーリオスのこと。

アイスキュロス:〔前525年-前456年〕ギリシアの三大悲劇詩人のひとり。罪と罰の因果など深みのある宗教観にもとづいて神や英雄の世界を描いた。

『黄金のロバ』:ラテン語伝奇小説の傑作のひとつで、原題は『変身物語』だが、『黄金のロバ』の名称がむしろ一般的。黒魔術へ深くのめり込んだギリシア人ルキウスは、誤ってロバに変身させられてしまう。ロバとして次々と人手に渡り、様々な逸話を耳にし、また種々の人間社会を体験し、最後にはイシス女神に救済される。


▶比較◀

焦げる:「人にあはむ  月のなきには  思ひおきて  胸はしり火に  心やけをり」(小野小町 古今和歌集 1030)。<大意>「月の出ない闇夜は、貴男(あなた)に逢う手段がないので、(おき)()(赤く燃える炭火)が燃えるような気持から目が()えて起きており、胸を走る火花のために、心が焼ける思いでいます」。この歌に詠まれている恋は、最初は逢いたいという切ない甘美な熱として胸に宿っていたが、夜も更けていき逢えない時間が長引くにつれて、その熱はしだいに高く激しくなり、ついには心そのものを焼きつくさんばかりの勢いになっている。


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