◇愛のエンブレム◇ 116

SEMPER IDEM.

Plut.     Amica non est vtendum, vt floribus; tam diu gratis, quamdiu recentibus.

いつまでも同じ。

プルータルコス       花のように恋人を扱ってはならない。新鮮であるかぎり()でられる、そういうものではない。。

たえて変わることなく

  

 花が新鮮で美しいときには、それは楽しいものだが、

いったんしぼんで枯れてしまうと、その値打ちも失せる。

愛はそれとは逆に、いついかなる時でも長く生き延びる。

<時>が経っても、愛が誠ならその正しい勤めを怠ることはないからだ。


❁図絵❁

道を進むアモルが、その左手で咲いた花を握って高く掲げ、また下がった右手でしぼんでしまった花を握っている。アモル自身は、咲いた花の方をしっかりと見つめている。

❁参考図❁

ベルナルド・ストロツツィ (Bernardo Strozzi)「鏡の前の老婆」1615年頃

 派手な頭飾りをつけ、ローカットの豪華な衣装をまとった女性が鏡を見ている。そうした華やかな装いは若い娘を彷彿とさせるが、鏡に映った姿からそれは実は老婆だとわかる。きりっとしまった顔立ちではあるが、その老いは隠せない。


〖典拠:銘題・解説詩〗

典拠不記載:参照 セネカ「知恵とは何か。いつまでも同じことを欲し、同じことを望まないことだ」(『道徳書簡』「教えたことの実践について」第20書簡5節[➽5番])。精神的な自己練磨の必要性を説きながら、言行一致こそが知恵の一級の証拠だといい、いつも同じ食事をし、どこでも同じ態度で振る舞うことを教える。参照 キケロー[➽5番]「ウェッレースは、いつもそうであったように、今も同じなのだ。」(『ウェッレース論駁』第2弁論1巻2節[➽101番])。シシリアの総督であったウェッレースの腐敗を法廷で糾弾するとき、キケローは彼の傲岸不遜な性格に触れて指弾している。

プルータルコス:[➽4番]不詳。参照 ホラーティウス[➽21番]「フレッシュな若さも/美しさも素早く去っていき、/枯れた老年になれば、/情欲あふれる愛も/気持ちよい眠りも奪われてしまう。花はいつまでも同じく春の美しさを/保てないし、月は明るくともいつも同じ顔で/いられない。」(『歌章』2巻11歌4-11行)。夷狄(いてき)の反乱に気をもむ友人に向かって、人生は、そして暗に国家も、凋落していくことを説明している。そして酒を飲み、女と遊び、憂さを晴らそうと勧める。

〖注解〗

『歌章』:〔前23年, 前17−前13年〕4巻合計103篇からなる詩集。私的な事柄から社会問題、さらに国家・政治のありさままでを主題として、大人として対象から距離を保ちながら、時には諧謔的に時には威厳をもって歌っている。ホラーティウスの詩集としては最もよく読まれてきた作品。


▶比較◀

:「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」(古今和歌集 小野小町 113)。<大意>「見ようと思っていた桜花は、むなしくも、衰え色あせてしまった。おりもおり、降り続きがちな春雨のさなかに、私が恋や世間のことに思い悩んでいるうちに。そして私の美貌も衰えたかも」。桜花と自分を重ねて、自分が老いていくことを嘆いている。美貌輝くかつての若さを懐かしみ、容色の衰えがもたらす惨めな老いを感じている。このように現実の自分の姿をきちんと把握する大人の感性を備えた女性に対しては、男性は変わることなく存続する愛を抱けることだろう。


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