◇愛のエンブレム◇ 22

Ouid. MEDIO TVTISSIMVS IBIS.
Daedalus, en medium tenet, extrema Icarus; ille,
Transuolat, hic mersus nomine signat aquas.
Gaudet Amor medio, nec summa nec infima quaerit;
Si qua voles aptè nubere, nube pari.
オウィディウス 中間を進めば、君はこの上なく安全である。
見よ、ダエダルス✒は空の中間を飛び、イーカルスは極端を飛ぶ。
ダエダルスは飛びきるが、イーカルスは海に沈み、海の名となる。
アモルは中間を喜び、最高も最低も求めない。
しっくりとした結婚をしたいなら、自分と等しい者と結婚せよ。
中間を飛べ
君に命じられた道筋は、ダエダルスとまったく同じものと、心せよ。
高く飛びすぎれば、人から軽蔑されて恥をかき、
低く飛びすぎれば、自分で自分を卑しめることになろう。
愛することもまた、ダエダルスの真似がなによりもふさわしいのだ。
❁図絵❁
画面中央上のイーカルスは、身体に蜜鑞で接着した人工の羽を付けて空を飛んでいたが、高度を高くとったために太陽の熱で蜜鑞が溶け、身体から羽がはがれ落下している。一方、落下する彼の前には、適度な高度で安全に飛ぶ父ダエダルスがいる。二人の下には、畑を耕す農夫がおり、また農夫の反対側には木の下でコンパス(計測の道具)を持ちながら、イーカルスを指さすアモルがいる。
❁参考図❁

アルトゥス・クェリヌス (Artus Quellijn) 「イーカルスの墜落」 17世紀
アムステルダム市庁舎(1665年完成)の「債務超過裁判の間」の入り口ドアの上は、イーカルスの墜落場面を描いたレリーフ(浮き彫り)で飾られている。この墜落は、中庸の教訓として16-17世紀には頻繁に用いられた。
〖典拠:銘題・解説詩〗
オウィディウス:『変身物語』2巻137行[➽世番]。引用箇所は、太陽神アポッローが息子パエトーンにむかって述べた一連の注意の一つ。アポッローは、息子があまりにも強くねだるので、自分に代わって太陽の凱車を御することを一日だけ許す。凱車の操縦がいかに難しいか、天空の航路をどう進まなくてはならないか、細かく注意を与える。注意を受けたが、息子はやはり凱車をひく荒馬を思うようにコントロールできず、天空を乱高下して進んでしまう。そのため地上をひどく焦がすことになり、その惨事を見かねた大神ユッピテルは雷霆を使ってパエトーンを打ち落とす。したがってこの典拠文は、パエトーンにまつわるものであって、詩が教えるようなイーカルスの逸話からのものではない。
典拠不記載:
〖注解・比較〗
ダエダルス:名匠ダエダルスは、息子イーカルスとともにクレタ島の迷宮に閉じ込められていた。迷宮脱出のために、ダエダルスは翼を考案作成し、完成した翼を背中に蜜鑞で接着する。父は息子に自分のすぐ後ろから追うように指示するとともに、高すぎず低すぎず飛ぶように忠告する。しかし飛ぶことに有頂天になったイーカルスは太陽近くを飛び、陽光で蜜鑞が溶け、翼がはがれ、海に墜落する。その海はイーカルス海と名づけられた。オウィディウス『変身物語』8巻137-235行参照。
自分と等しい者:「白玉か 何ぞと人の 問ひしとき 露と答へて 消えなましものを」(伊勢物語 芥川)。「[草の上で光っているのは]真珠なのですか、何なのですかとあの人が私に尋ねたとき、私は露ですよと答えたが、[私たち二人ともあの露のように]消えてしまえばよかったのになあ」。ある男が、身分違いで妻にとうていできない女性に長年にわたって求婚し続けた。あるとき、その女性を盗み出し、芥川という川のところまでたどり着いた。女は、草のうえにある露をみて、これは何ですかと尋ねた。時まさに雷雨となったので、近くに見つけた隙間だらけの蔵に女性を入れ、夜中、自分は入り口のところで警備にあたった。しかし、女性はどこからか乱入した鬼に喰われてしまい、夜明けにそれに気づいた男は地団駄踏んで悔しがり、この歌を詠んだ。ただし、これは寓話で、男(在原業平)が、藤原高子(後に清和天皇の女御)を「盗んだ」が、それを高子の兄弟である藤原国経・基経が取り返したことを、鬼に喰われたと言い換え評している。
