◇愛のエンブレム◇ 47

VIA NVLLA EST INVIA AMORE.

Quæ non tentet Amor perrumpere opaca viarum,

Qui infidi spernit cæca pericla maris?

Pro rate cui pharetra est, pro remo cui leuis arcus;

Vt portum obtineat, quidlibet audet Amor.

愛する者はどんな道にもはばまれない。

不実な海がもたらす予期せぬ危険をものともしないアモルは、

航路がどんなに暗くとも、ひるまずに突き進むのだろうか。

アモルの矢筒は舟となり、その軽い弓は(かい)となる。

 港に到達するためには、どんなことでもアモルはあえて行うのだ

愛は手だてを見いだす

 ここにいるアモルがどうやって海を渡ろうとしているか

ごらんなさい。矢筒を舟に、弓を櫂に、

翼を帆にしている。このように、愛はどんなときでも、

自分の恋人のところに行くためなら、やれることはなんでもするのだ。


❁図絵❁

 アモルが矢筒を舟に、弓を櫂に、矢筒の帯を帆にして海を渡っている。アモルの背後の岸辺には女性が立って眺めており、アモルは女性ともうすでに出会いを済ませ、元の場所に戻っている様子である。アモルが工夫を凝らして帆船になっていることが、アモル右奥に浮かぶ帆船によって強調されている。

❁参考図❁

ルドフル・バクハイゼン (Ludolf Bakhuizen)「悪天候の中の漁船と沿岸航行船」1660-63年

17世紀オランダ絵画には、嵐の情景の中で船体を傾けた小舟や帆船がしばしば描かれている。ここでは枯れ木の根元で一人の男と少女が船の様子を見守っているが、船乗りたちは図絵のアモル同様に、港に到着するためなら、やれることはなんでもする。


〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:実際にはオウィディウス「徳のある人にはどんな道も拒まれない」(『変身物語』14巻113行[➽世番])。英雄アエネイアスに向かって巫女シビュラが告げた言葉。生者であるアエネイアスは本来なら冥界に入ることは許されない。しかしおおいなる徳の持ち主であるがゆえに特別に冥界に降りることが許されるという託宣。

典拠不記載:

〖注解・比較〗
航路:「千鳥鳴く 佐保の川門の 清き瀬を 馬うち渡し いつか通はむ」(『万葉集』 大伴家持(おおとものやかもち) 巻4-715)。「あの千鳥の鳴く佐保川の渡り場の清らかな瀬を、馬を渡して、いつになったらばそなたのもとへ通って行けるであろうか」(佐佐木信綱 訳)。佐保川(奈良市)は現在でこそ狭い川幅だが、万葉の時代には「千鳥の鳴く洲もあるような佐保河の渡りは瀬が広い」とまで詠われていた。そうした障害があっても、舟ではなく馬を使って相手の元になんとしても通っていきたいという。


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