◇愛のエンブレム◇ 66

ANTEIT VENATIO CAPTUM.

Venator saltus atque inuia lustra pererrat,

Sectaturque vagas per iuga summa feras:

Ne cessator eris qui amas; venêre necesse est.

Non petet ipsa tuum praeda cupita sinum.

Pindar.                Si verò aliqua est inter homines felicitas, ea non sine labore existit.

捕まえるなら、まずは狩り。

狩人は、転々と飛びまわる獲物を追いかけ、

  山地、荒地と道なき道を突き進み、尾根の頂を越える。

恋する君よ、ぐずぐずするな。狩りに出なくては。

  お目当ての獲物✒が自ら進んで君の胸に飛びこむことはないのだ。

ピンダルス  人間にそもそも幸せというものがあるなら、それは労苦があって手に入る。

捕まえたいなら追え

 

 鹿を捕まえたいなら、まず追わなくてはならない。

女もまた、手に入れたいなら追いかけなくては。

苦労をして手に入れれば、そのだけ値打ちが増すというもの。

簡単に手に入るものは、値打ちがあるとは思わないものだ。


❁図絵❁

アモルが野辺で合図の角笛を吹き、五頭の猟犬に鹿を追わせ、自らも鹿を追っている。

❁参考図❁

ゲリット・クラース・ブレッケル (Gerrit Claesz Bleker)「海浜での鹿狩り」1625-29年

三人の貴族がそれぞれ馬にまたがり、猟犬によって追いこまれた鹿たちをまさに剣で討ちとろうとしている。猟犬と角笛は歩行(かち)の下僕が扱うものであったが、フェーンの図絵ではアモルが、歩行・角笛・討ち取りと、貴族と下僕の両役をこなしている。


〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:

典拠不記載:

ピンダルス:『ピューティア祝勝歌』12歌28-29行[➽30番]。アクラガス(シシリア島のアグリジェント)の守護神に捧げた奉納歌のなかで、女神アテーナーが創造したというすばらしい調べが言及される。そしてせっかく創造された調べも、調べを探し出し、その音色を出す人間の側の努力がなくては隠れたままに終わると教える。

〖注解・比較〗

お目当ての獲物:「窺狙(うかねら)ふ 跡見(とみ)山 雪のいちしろく 恋ひば妹(いも)が 名人知らむかも」(『万葉集』2346)。「獲物をうかがい狙う跡見(跡見山)の雪のようにはっきりと恋を態度に出したならば、妻の名を人々が知ってしまうだろうかなあ」(中西進訳)。恋の目当てである相手の女性を、獲物の様子がどうかと探るような目つきではっきりと見るならば、周りの人に意中の女性が誰なのか露見してしまうだろうなという推量をしている。目当ての女性の尻を追いかけることはもちろん、視線をやることにすらもためらいを感じている。なお跡見山の場所は、奈良県桜井市あるいは宇陀市など諸説あって決められない。