◇愛のエンブレム◇ 111

EST SIMVLARE MEVM.

Laruatus licèt incedo, copertus & ora,

Non est quod metuas, cara puella, dolos.

Sum tibi syncerus, populo fucatus; Amoris

Garrula ne nostrum lingua reuelet opus.

ふりをするのが私の(なら)い。

僕は仮面をつけ顔を隠して近寄りますが、

愛しい貴女(あなた)よ、だからといって(だま)されると思わないでください。

貴女には誠実です。でも他人には真意を見せません。噂好きの

舌に、私たちの行いが露見しないために。。

真意を隠すことは愛の知恵

    アモルは仮面を使うが、それは彼女をだますためではない。

   変装していても、彼女の方はその姿を恐れる必要はない。

   これは、密かに悪意を抱いている者たちを騙し、

   舌が暴れ回って出す悪口から身を守るためなのだ。


❁図絵❁

 真剣な顔をしたアモルが、うつむき加減のまま、仮面をかざして顔を隠している。

❁参考図❁

ヘンドリック・ヤンスツ・テル・ブルッヘン (Hendrick Jansz ter Brugghen)「不釣り合いな二人」1623年頃

 胸をあらわにした娼婦が、黄色い歯を見せながら、男の腕をつかんでいる。その男も女を肩で抱いているが、顔には老人の仮面をかぶり、老眼鏡をかけて、実際の年齢よりも歳をとっているようにみせている。この場面で仮面は、男が自分の素性と行動を社会から隠すための巧妙な偽装手段となっている。この男は、自分が若い娼婦と関係を持っているという事実が周囲に知られることで、いかがわしい評判がたち社会的な立場が損なわれることを恐れているのだ。このように、仮面には単なる変装道具以上の意味があり、社会的体裁や世間体を守るための防御壁でもある。


〖典拠:銘題・解説詩〗

典拠不記載:

典拠不記載:

▶比較◀

ふり:「恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか」(壬生(みぶの)(ただ)() 百人一首 41)。<大意>「恋しているという私の噂がもう立ってしまった。誰にも知られないように、心ひそかに思いはじめたばかりなのに」。恋心をひそかに抱きつつも、他者の視線や噂によって恋が表面化し、意中の女性に伝わってしまうことへの精神的葛藤—伝わる喜びと好奇の世間がもたらす(わずら)わしさ—がここにはある。恋心を隠したいが隠しきれない状況は、どんな仮面を被ったところで通用しないことを示唆している。


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