◇愛のエンブレム◇ 39

AD AMVSSIM.
Vt perpendiculo cuntos manus ipse labores
Dirigit artificis: sic quoque verus amans.
Verus amans recto numquam de tramite flectet,
A domina pendens totus, & in domina.
ぴたり正確。
職人の手が、どのような仕事をするにも、測鉛具✒に
あわせてぴったり進めるように、真に愛する者もまたそのようにする。
真に愛する者は正しい道からけっしてはずれることなく、
自分を受け入れてくれた女性を基点に、女性に全面的にぶらさがるだろう。
正しいところからふらつかぬこと
ちょうど錘がまっすぐに下がるように、
愛する者はあっちこっちとふらつかず、いつも自分の恋人のところに、
まっすぐ正しくとどまらなくてはならない。ひとたびぐらついて
離れようものなら、自分の面目を失うことになるのだから。
❁図絵❁
アモルが六等分された石の上で、閉じた測鉛具を握って立っている。アモルのはるか背後には、倒れたオベリスク、石塔、石壁が散在し、測鉛具をきちんと利用しなかった場合に起こること、すなわち自分の恋人との関係でその道に外れるようなことをすれば、愛が壊れてしまうことを教えている。
❁参考図❁

測鉛具(17世紀 銅製 200 mm ガリレオ博物館 蔵)
現在ではアルコールの中に泡の入った水準器が一般的だが、当時は測鉛具によって水平・垂直を確かめていった。
〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:実際にはウァッロー『農事考』✒(第2巻1章26節)。家畜の購入にあたり、家畜ごとに何歳の家畜を買うのが適切かを教えている。しかしその年令の「それぞれの数字は、ぴたり正確に受けとめてはならない。ちょうど千艘の船がトロイに向かって出発したといっても、きちんとした数字をいっているわけではないようにね」と述べている。
典拠不記載
〖注解・比較〗
測鉛具:石工などが、糸のついた鉛の重しを上から垂らして、水平を検知するための道具。
ウァッロー:〔前116-前27〕ローマ共和政末期の学者・詩人。実学を重んじるローマ人の気風に合致した網羅的な数々の実学書を著した。その博学はローマの作家の中でも最高峰に位置する。
『農事考』:荘園を購入したばかりの妻との対話形式で、作物から家畜の扱い方までも含めた農業の作法に関する教え。
道から…はずれることなく:「尋ねても 我こそ訪はめ 道もなく 深き蓬の もとの心を」(源氏物語 蓬生)。「誰も訪ねませんが わたしこそは 訪問しましょう 道もないくらい 深く茂った蓬の宿の 姫君の変わらないお心を」(渋谷栄一 訳)。光源氏は、恋人である花散里のもとへ行く途中、荒れ果てた屋敷を目にとめる。それがかつての恋人・末摘花の屋敷だと気がつく。源氏は、家来の惟光に中の様子を探らせると、末摘花はこの荒れ果てた家で源氏の来訪を待ち続けていることがわかる。自分を唯一の希望として生きる女の一途な想いに源氏は心を打たれ、花散里への訪問を止め、この姫君に逢うことにする。車から降りるとき、独り言のように詠んだのがこの歌。なお、末摘花は大きな赤い鼻をした顔立ちの不細工な女性であったが、それでも源氏は心をつくす。
