◇愛のエンブレム◇ 48

Ovid.     ERRAT, ET IN NVLLA SEDE MORATVR AMOR.

Acer & irrequietus amans animo omnia versat,

Ardet, & haud vllis permanet ille locis.

Plaut.  Súmne ego miser, qui nusquam benè queo quiescere.

Si domi sum, foris est animus: si foris sum, animus domi est:

Ita mihi in pectore atque in corde facit Amor incendium.

オウィディウス     アモルは動き回り、同じ席についていられない。

激しい恋をするとそわそわし、心のなかであれこれと反芻し、

心が燃え、ひとところにいられない。

プラウトゥス     どこにいてもしっかりと休めない自分は、哀れな人ではないか。

家にいれば心は戸外にあり、戸外にいれば心は家にいる。

アモルはそれほどまでに私の胸と心に炎をかき立てる。

アモルには休みがない

 どんな所にいてもアモルは休んでいられない。

けっして休まず、日々、どうしたら恋人に喜んでもらえるか、

その暖かい眼差しが手に入るのかを考えている。

アモルは、これだけは何があっても油断を怠らない。


❁図絵❁

集会所の中で対面して二列に並べられたイスの間を、アモルが手を前に差し出しながら、気もうつろにふらふらと歩いている。

❁参考図❁

ヘラルド・テル・ボルフ (Gerard ter Borch)「好奇心」1660年頃

17世紀オランダ絵画には恋文を読む女性の姿が多く描かれている。そういう女性の姿は、座っている場合にはもちろんのこと、立っている場合であっても、イスがほとんど必ずといってよいほど描かれている。この絵の女性は、手紙を読むのではなく書いているが、イスが安息の象徴だとすると、イスに腰掛けていても、たえず周囲の好奇の目にもさらされて「休んでいられない」のだろう。


〖典拠:銘題・解説詩〗
オウィディウス:[➽世番]『恋愛術』3巻436行[➽2番]。女性への忠告として、女性の外見のよさを口にする男を避けるように勧めている。その理由がこの銘題。

典拠不記載:

プラウトゥス:[➽26番]『商人』3幕4場588-590行。ある息子が、自分の愛する女を父親が奴隷として売り飛ばしたと思い込み、それを嘆き悲しんだときの台詞。

〖注解・比較〗
『商人』: 商人である父親の命令によって、外地に行った息子カリーヌスは、外地で見つけた愛人を、自分の母親の召使いという名目で、外地から連れて帰る。ところが父親もその女に惚れてしまう。そこで父は娘を自分のものにすべく、家に置いておくのは危険だから奴隷として売り飛ばすと息子に向かって偽り、実は他人の名でその女を買う。その父の策略を知らず、息子は失意のうちに外国に旅立とうとする。その間際に、父親は自分の友人からその女をあきらめるように説得され、父は息子に真実を打ち明ける。

しっかりと休めない:「君恋ふる 涙のこほる 冬の夜は 心解けたる ()やは ()らるる」(拾遺抄 304)。「貴男(あなた)を恋して涙を流しておりますが、その涙も凍るほど冬の夜は寒い。さて安心しては独り寝できるでしょうか、いや寝られやしません」。布団の中に入ってはいても、ぐっすり眠ることなど論外で、たとえ少しまどろむことがあっても、すぐに恋しい貴男の面影が思い浮かび、寝覚めがちで休めない。


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