◇愛のエンブレム◇ 50

FESTINA LENTE.
Exemplo assidui tibi testudo laboris,
Quae leporem vicit, semper eundo, vagum.
Semper amans amat, & tandem potietur amata:
Non benè amat, quisque non amat assiduè.
ゆっくり急げ。
ずっと進み続けることで、わけもなく走りまわるウサギ✒に勝った
カメを、粘り強い努力の例とせよ。
ずっと愛し続けていれば、ついにはその愛の相手が手に入るだろう。
不断に愛していないのは、真に愛してはいないのだ。
忍耐が勝つ
ウサギとカメは、二人のうちどちらが速く目的の地点に
着くか、スピードの賭けをした。
ウサギは走ってはしばしば休んだが、カメは進みつづけて、
勝利を得た。だから恋人も進み続けなくてはいけない。
❁図絵❁
アモルはゆっくりだが着実に進むカメの後ろを歩いている。アモルは後ろを振り返りながら、休んでいるウサギと歩いているカメをそれぞれ指さしている。
❁参考図❁

ヘルブランド・ファン・デン・エークハウト(Gerbrand van den Eeckhout) 「音楽会」1650年代初期
大きな庭に面したテラスで、二組のカップルが和気藹々と楽しんでいる。後景のカップルの男性は胸に手を当てながら、扇子をもった女性に何かを語っているし、前景では男性が女性とともに楽譜を広げて歌を歌っている。その男性の手はやさしく女性の肩に掛かり、また脚は女性の脚に軽く触れている。こうした光景を、頬杖をつきながら(失恋と憂鬱の象徴)ぼんやりと眺めている男が画面の最前列にいる。この男性にはカメの粘り強さが足らなかったのかもしれない。
〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:スエートーニウス✒『ローマ皇帝伝』✒2巻25節4。歴史家スエトニウスによれば、ローマ初代皇帝アウグストゥスは、猪突猛進、軽挙妄動は完璧な将軍にあってはならないことと考え、この言葉を好んで口にしたという。なおエラスムス『格言集』2巻1章1節 [➽13番]にこの句についての長文のエッセイがある。
典拠不記載:
〖注解・比較〗
ウサギ:この逸話の典拠は『イソップ寓話集』(352番)。ただしその教訓は、「生まれながらの資質がゆるがせにされると、その資質はしばしば努力に打ち負かされるものだ」となっている。
スエートーニウス:〔69~140年頃〕ローマ帝政初期の伝記作家。トラーヤーヌス帝とハドリアーヌス帝のもとで図書・文書係などを務めるが、礼儀を失した振る舞いからハドリアーヌス帝の不興を買い解任される(122年頃)。その後は著述に専念したといわれるが、現在では『ローマ皇帝伝』と『名士伝』のみが残っている。
『ローマ皇帝伝』:カエサルからドミティアーヌスまで、12人のローマ元首についての伝記。各人物の家系・誕生から死に至るまでの年代記的記述はもちろんのこと、各皇帝の風貌、人柄に加えて世間の風評までも収めている。
ずっと愛し続ける:「貌鳥の 間なくしば鳴く 春の野の 草根の繁き 恋もするかも」(万葉集 巻10 1898)。「貌鳥が絶え間なく鳴く春の野には、草が一面に茂っているように、自分は絶えることのない恋をすることであるよ」(私訳)。貌鳥はカッコウの古称で、美しい鳥の意味でもあった。
