◇愛のエンブレム◇ 103

AMANS SE SVAQVE PRODIGIT.

En, vt Auaritiæ loculos extorqueat infans

Penniger: ingentes nam odit amator opes.

Prodigit ille suum, dominæ quò seruiat, aurum,

Lætus in obsequio cuncta dedisse suo.

恋をすると、身も財産もすり減らす。

ご覧なさい、羽のある子供が、<貪欲>から銭箱をもぎり

取ろうとしている。恋をすると、財産がしこたまあるのが憎くなる。

恋する男は女に仕えようとして、女の言いなりになって

全財産を喜んではたきまくってしまい、散財する。

愛は惜しみなく与える

    ひどくけちで貪欲の虜になっている人も、

恋をすれば気前がよくなる。財布の紐がどれほど堅くとも、

アモルが胸をその矢で突き刺すだけで、

財布の鍵や紐はもちこたえられず、やすやすと開いてしまう。


❁図絵❁

 アモルが、老婆と財布の奪い合いをしている。アモルはなんとしても財布を取って金を持ち去ろうとするが、貪欲の老婆が両脚でふんばる。老婆の足下の裾には、かぎ爪のあるもう一本の足がのぞいており、この老婆の正体は、顔が女で体が鳥のハルピュイア(貪欲の象徴)そのもの、あるいは老婆がハルピュイアをマントの下に隠していることがわかる。

❁参考図❁

ユディト・モレナール・レイステル (Judith Jans Leyster)「若い女性に金を差し出す男」1631年
 裁縫をしている若い女性の肩に手を置きながら、男性が右手で金貨を差し出している。コインを出すのは、デートに誘うという符牒であったから、この男は女性をものにしようとしていることになる。ただし女性は、男の方を振り向かず裁縫に没頭している。その姿は家庭の女の美徳をあらわしている。


〖典拠:銘題・解説詩〗

典拠不記載:

典拠不記載:参考「女はみな貪欲だから盗人なのであり、女は銭箱を手にしていることがわかる。」(カペラーヌス『愛について』3巻68節)。

〖注解〗

銭箱:ローマでは箱を仕切り、貨幣別(金貨・銀貨・青銅貨・銅貨)に入れておくのが貨幣の保管方法として一般的であった。図絵は財布になっているが、詩では巨額の貨幣が詰まった銭箱を想定している。

カペラーヌス:〔12世紀頃?〕『愛について』の著者としてのみしか知られていない。この本は、宮廷恋愛、すなわち独身の男性が既婚の貴族女性を愛し、その女性に献身的に奉仕する愛について、カペラーヌスが若者に説明する形でなされている。そのポイントは、宮廷恋愛は愛する男性も愛される女性もともに品性を高めること、そして夫婦同士には真の愛は生まれないという教えである。16-17世紀にはほとんど注目されず、20世紀になってからこの本は宮廷恋愛を語る際の定番となった。


▶比較◀

すり減らす:「この町々の中の隔てには、塀ども廊などを、とかく行き通はして、気近くをかしきあはひにしなしたまへり」(源氏物語 21 少女)。「この四つの町々の間の仕切りには、塀や渡り廊下などを造り、お互いに行き来するようにして、睦まじいお付き合いをなさるようにと、配慮されています」(瀬戸内寂聴訳)。光源氏は、京の六条に、四つの「町」からなる広大な六条院を建築し、それらを四季に分け、それぞれの「町」に、正妻を含めて、一人ずつ自分の愛する女たちを住まわせた。光源氏は、六条院とそこにしつらえた豪華な調度品、そしてそこに住まう女たちへの惜しみない贈り物など、愛する女たちのために莫大な財を費やしたのであった。


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