◇愛のエンブレム◇ 62

IN TENEBRIS SINE TE.

Cùm te non video, mea lux, vel nigra videntur

Lilia, & haud lucent lucida signa poli,

Luridus & solis mihi, crede, est aureus orbis:

Ipsi etiam melli fellis amaror inest.

君がいなければ暗闇の中。

僕の光よ、君が見えないと、ユリは

 黒く見えるし、北の輝く星座もその光を失い、

太陽の黄金の顔も、まったくもって、青白く、

まさしく蜂蜜ですらも、胆汁の苦味がするのです。

不在が殺す

 僕は美しい恋人の顔を見ることができないので、

どんなものにも心から喜べなくなってしまった。

ユリは黒く見えるし、太陽には光がない。

恋人がいないために実情がこんなに変わってしまったのだ。


❁図絵❁

 心臓に矢を射られたアモルが庭に立っている。顔を読者の方に向けながら、読者を両手で庭に咲くユリに目を向けるように誘っている。

❁参考図❁

ピーテル・コッデ (Pieter Codde)「憂鬱の若者」1630年頃

脚を投げ出してイスにだらしなく深く座り、服のボタン(腕と腹の部分)も頭髪もだらしない。男の活力のなさは頬杖をついていることが象徴し、心の暗さは、男が手に持つ火の消えたキセル、そして壁と床のくすみに反映されている。なお頬杖は恋の煩悶や失恋の象徴でもあった。


〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:参照「君がいなければ、ああ哀れな僕よ、ユリも黒く見えるのだ」(カルプルニウス『田園詩』3歌51行)。

典拠不記載:

〖注解・比較〗
カルプルニウス:〔3世紀後半頃?〕1471年にその『田園詩』(全11歌)が出版されてから版を重ね、ルネッサンス文学に影響を与えた。
北の輝く星座:大熊座(北斗七星)。
胆汁:肝臓は怒りを司る器官と考えられ、肝臓が分泌する胆汁は、怒りの他に狂気の原因と考えられていた。

君が見えない:「たなばたに 貸つる糸の うちはへて 年の緒長く 恋ひやわたらむ」(凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)『古今和歌集』180)。「七夕に供えた糸が長く延びている─ そのようにこれからずっと長い間恋しく思い続けることになるのであろうか」(高田祐彦 訳)。七月七日の夜に詠まれた歌で、一年に一度しか会えないにもかかわらず、彦星と織姫の恋は長く続いていくように、私はあなたに逢うことがかなわなくとも、2人の関係も長く続いていくのだろう。なお七夕祭りの際に、女子は織姫星に糸をお供えして、裁縫・機織りの上達を祈る。このお供えを、織姫に糸を貸すことに見立てている。また「年の緒」は糸の縁語で、長く続くという意味で使われる。


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