◇愛のエンブレム◇ 33

Ouid. NESCIT AMOR MAGNIS CEDERE DIVITIIS.
Nobilium gazas Amor, atque insignia calcat;
Nescit enim priscis cedere imaginibus.
Nobilitas sub Amore iacet: nam rustica
Regi, Regia rurali sæpè puella placet.
オウィディウス アモルは、巨富に屈することを知らない。
高貴な人々の宝や紋章をアモルは踏みつける。
それというのも、由緒ある肖像にに屈することを知らないからだ。
名声はアモルの下では役に立たない。王が田舎の女を、
王女が田舎者を気に入るとはよくあることだ。
愛はすべてに勝る
素性が尊ばれることも、財産が優先されることもないのが、愛だ。
アモルは、王が羊飼いの娘を愛するようにしてみたり、
羊飼いが女王に愛を降りそそいでみたりする。
愛は身分の釣合をほとんど気にかけない。
❁図絵❁
アモルがシュロ(勝利の象徴)を持ちながら、足で紋章(高貴な身分の象徴)入りの盾を踏みつけている。また同時にアモルは後ろを振りかえながら三つの宝箱を見ている。中央の箱の上には貴族の胸像とコインが置かれ、手前の箱からは宝石類がこぼれ出て、一番奥の箱には財布らしきものが立てかけられている。
❁参考図❁

装飾ワイン・グラス(1609年)
17世紀初頭にオランダで、この種の大型グラス(オランダ語 ルーメルRoemer)が流行した。このグラスの所有者はオレンジ公ウィリアム[ウィレム・ファン・オランイェ]の息子オラリエ公(マウリッツ・ファン・ナッサウ)で、グラスにはその紋章が描かれている。また紋章の横に描かれている樹木のエンブレムの銘題は、「芽はやがて木となる」(Tandem fit surculus arbor)とある。王子は殺害された父を継いでオランダの一部の州の総督となるが、生涯、結婚しなかった。もっとも貴族の二人の女性との間に子をもうけた。
〖典拠:銘題・解説詩〗
オウィディウス:[➽世番]実際にはプロペルティウス『エレギーア』1巻14歌8行[➽14番]。詩人が、夜、恋人とともに船上で酒を飲みながら、雄大な森を眺めているときに述べた言葉。
典拠不記載:
〖注解・比較〗
名家:「白波の 寄する渚に よをすぐす 海人の子なれば 宿も定めず」(新古今和歌集 1701)。「白波の寄せる海岸で生涯を過ごす海士の娘ですから、決まった家はありません」。この歌は、遊女が詠んだものとされ(和漢朗詠集に所収)、旅人が遊女に求婚したところ、遊女がその素性ゆえにきっぱり断ったことを示している。当時の遊女は、港に停泊する大型の帆船に、小舟で近寄り、客引きをし、酒と身体を提供した。また求婚は、男が女に、その親の素性、家の場所を尋ねるが、女がそれに答えれば結婚承諾の意であった。
