◇愛のエンブレム◇ 35

OS CORDIS SECRETA REVELAT.
Plutarch Vbi dolet, ibi manum adhibemus: sic si quid
delectet, ibi linguam.
口は心の秘密を明かしてしまう。
プルータルコス 痛みがあるところに私たちは手を当てるものだが、同じく、何かうれしいことがあると、そこに舌を使うものだ。
口は心をあばくもの
痛みを感じるところには手がそっとあてがわれる。
心におさめてあることを、口はあばく。
愛のことをずいぶん言うようになれば、恋愛していることが表に出てしまい、
愛についてついつい語っていると、愛していることはついついばれてしまう。
❁図絵❁
二人のアモルのうち、左側のアモルが笞を使って右側のアモルの肩を打っている。打たれたアモルは、痛みをこらえながら困惑した表情で、その肩に手を当てている。
❁参考図❁

フェルメール (Vermeer)「レースを編む女」1669-70年
針仕事は、糸紡ぎと並んで、女性の慎ましさを象徴する家事であった。ここでは、女性がいる場所は等閑視され、女性その人の姿に焦点があてられていることで、その姿から集中と沈黙が伝わってくる。この女性は募る恋心を隠すために一心不乱に針仕事に専念して、恋を誰かに話したい気持ちを抑えているのかもしれない。
〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:
プルータルコス:『倫理論集』「おしゃべり」513 e (ロエブ版6巻459ページ)[➽4番]。ただし「同じく」以下の文はフェーンの創作によるもの。
〖注解・比較〗
舌を使う:「声はせで 身をのみ焦がす 蛍こそ 言ふよりまさる 思ひなるらめ」(『源氏物語』25 蛍)。「声には出さずひたすら身を焦がしている螢の方が口に出すよりもっと深い思いでいるでしょう」(渋谷栄一 訳)。玉鬘による、蛍兵部卿宮(光源氏の弟)への返歌。光源氏の養女となった玉鬘は、多くの求婚者に言い寄られている。その中の一人、蛍兵部卿宮が玉鬘のもとを訪れたとき、源氏が戯れ心から玉鬘の目の前に多くの蛍を放ったので、その光によって浮かび上がる玉鬘の美しい姿を宮は見てしまう。宮の恋の想いはますます募り、その恋心を詠い、玉鬘に送る。それに対して玉鬘は、自分の想いを口に出さない蛍の方が口に出す貴男よりもその想いが深いと、冷たく切り返している。結局、宮の想いは成就しなかった。
