◇愛のエンブレム◇ 19

ATLATE MAIOR.
Cælum humeris Atlas tulit, Alcidesque vicissim:
At cælum & terram fert simul vnus Amor.
Robur Amoris enim non cedit viribus vllis;
Hercule & Atlante hinc maior habendus Amor.
アトラース✒よりも偉大な者✒
アトラースはその双肩で天球を背負い、今度は代わってヘルクレースが背負った。
しかし今、天球と大地とを同時にアモル一人で背負っている。
実にアモルの頑強さはどんな力にも負けない。
だからヘルクレースとアトラースよりも偉大な者と、アモルは見なされるべきなのだ。
アトラースよりも強い
詩人の語るところでは、アトラースが天地を支えているが、
それを手助けするのがヘルクレース。だからこの二人は屈強といわれている。
だが、アモルの力はさらに頑強で、手助けは無用。
ただ愛の力だけで、天地を支えてしまうのだ。
❁図絵❁
アモルが、黄道十二宮帯によって象徴される丸い天球を、アトラースのように腰をかがめながら支えている。下腹に力が入り、その顔は曇っていることから、かなりつらいことがわかる。
❁参考図❁

ジャコモ・デラ・ポルタ (Giacomo della Porta)「アトラースの泉」1602年
ローマ郊外の大邸宅(ヴィッラ・アルドブランディーニ)にある泉。巨大なファサードの中央に立つアトラースは、背丈の大きさだけでなく、天球を支えてその力の巨大さも示している。
〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:
典拠不記載:
〖注解・比較〗
アトラース:ユッピテル神に反乱する巨人族[➽フェーン氏への賛辞]に加わったかどで、天球を支える罰を科せられた(ヘーシオドス✒『神統記』517-520行)。天球を支えていたアトラースにヘルクレースは会うと、天球を支える代わりにヘスペリデスの園のリンゴを奪ってもらう。
偉大な者:アトラースの仕事の肩代わりをする英雄ヘルクレース[➽17番]のこと(フィロストラトス『絵画像』「アトラース」2巻20章[➽5番])。英雄の十二の難行のひとつが、西方の果てにあるヘスペリデスの園のなかの蛇ラードーンに守られたリンゴを奪うことであった。英雄はアトラースに略奪の仕事を頼むが、アトラースがその仕事にかかわる間に、天球を支えるというアトラース本来の仕事を英雄が肩代わりした。
ヘーシオドス:〔前740年-前670年頃〕ホメーロスと並び称されるギリシアの詩人。農業労働の尊さや日常生活の心得を教える『労働と日々』、また宇宙原理を明確にしつつギリシアの神々を体系的に整理した『神統記』がある。
偉大な者:「力をもいれずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女の中をもやはらげ、猛きもののふの心をもなぐさむるは歌なり。この歌、天地闢けはじまりける時よりいできにけり。」(古今和歌集 仮名序)。「力をも入れずに天地の神の心を感動させ、目に見えない鬼や神をあわれと思わせ、男女の間をも親しくさせ、あわれに疎い猛き武士の心をも慰めるものは歌である。この歌は、天地の開闢の時から出て来た。」(窪田空穂 訳)。天地ができあがった時とともに歌が生まれ、歌によって発現する言葉の力によって、天も地もその動きを変え、神々の心は動き、男女の愛も育まれ、獰猛で粗野な男性の心も和むという。言葉の力は、愛の力よりも勝っているように考えられている。
