◇愛のエンブレム◇ [賛辞 5] ピエトロ・ベネデッティ

GEnera il genitor’ vn suo simile,

  D’arme, e di giostre parla il caualliero,

  Il pastorel de campi, e del ouile,

  E de mari, e de venti il buon nocchiero:

  Tu Venius noua Venere gentile

  Coui parti d’ Amor, sei padre vero,

  E rinouando i giouenili errori

  l’ Animo stanco alleggi & aualori.

Come no sempre vdia l’hostili squille

  Che vn tempo tenne anchor l’orecchie sorde,

  Ne cinse spada il generoso Achille

  Tra l’armi greche sol di sangue ingorde,

  Ma per sfogar d’ Amor l’alte fauille

  De la cetra tocco le molli corde:

  Cosi tu trà li graui tuoi lauori

  Per respirar rimembri i primi ardori.

                    Petro Benedetti

無題

父親は自分の似姿を生み、

 騎士は戦闘と馬上槍試合について、

 羊飼いの少年は田園と羊について、

 熟練の舵取りは海と風について語る。

 フェーンよ、あなたは高貴なもう一人のフェーンとして

 アモルの育ての父のよう、いや、本物の父親であって、

 活気のない心に、若いからできるさすらいを

 思い出させて、その心を強くし、ささえる。

ちょうど、かの高邁(こうまい)なアキレースが耳に栓をして

 いつも敵の音を聞こえないようにし、

 剣も帯びず、ひたすら血に飢えた

 ギリシアの武器も抜かず、

 愛の高貴な閃光を言葉にあらわすために、

 シターンの弦をやさしくひいたように、

 あなたは、このすぐれた作品において、

 当初の炎を思い出させ、安息を与えてくれる。

ピエトロ・ベネデッティ


〖注解〗

アキレース:トローイア戦争におけるギリシア軍の最強の戦士。ギリシア軍の総指揮官アガメムノーンに自分の戦利品となるはずだった女を取られてしまったために、トローイアの地にありながらギリシア陣営から一歩も出ず、竪琴を奏でるなど余興に耽っていた(『イーリアス』9巻 223-28)。そして親友が戦死するまでは決して戦闘に加わわらなかった。

シターン:16-17世紀に流行したギターに似た弦楽器。ギリシアなので竪琴のはず。

ピエトロ・ベネデッティ:[生没年未詳]劇作家、作曲家。牧歌風の悲喜劇作品がある。フェーンの『ホラーティウスのエンブレム』をイタリア語に翻訳もしている。

❁参考図❁

ニコリーニ・ダ・サッビオ (Nicolini da Sabbio)「竪琴を弾くアキレース」(ホメーロス『イーリアス』挿絵入りギリシア語版, ヴェネチア:1640年)

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