◇愛のエンブレム◇ 43

FACIT OCCASIO FVREM.

Ouid.   Non facilè esuriens posita retinebere mensa,

Et multam saliens incitat vnda sitim.

チャンスがあれば泥棒になる。

オウィディウス   出された食事を()きっ食事を腹におさめないでいることは

簡単ではないし、ほとばしる泉の水があれば、ひどく喉は乾くものだ

チャンスは盗みのもと

 腹がへって菓子があるなら、菓子を食べずにすますことはまずできないし、

のどが渇いて井戸端にいるなら、飲まずにはいられない。

愛する者が自分の恋人といっしょにいるなら、チャンス到来と考えるだろう。

彼女と愛の交わりを控えることは、まずはできない相談だから。


❁図絵❁

掛け布で仕切られた屋外で、テーブルにしつらえられた料理をアモルがつまみ食いをしている。掛け布の向こう側にある水飲み場では、別なアモルがため水に口を突っ込んで水を飲んでいる。いずれのアモルも行儀が悪い。

❁参考図❁

ヤン・ステーン (Jan Steen)「楽しむ二人」17世紀後半

女性の背中のところには、売り物の果物を入れた籠が一つ、そしてその籠を背負うための軛がある。女性の右足近くにあるもう一つの籠からは、売り物の果実がやや乱雑にはみ出ている。木にかかっている鳥かごの中の鳥も売り物だが、こちらは男性の売り物だろう。物売りたちがほんのひととき休息する場面だ。しかし体を休めるはずのこの時に、男はチャンス到来とばかりに帽子を飛ばして、自分の好きな女に飛びかかる。女の方は我が意を得たりとばかりに、うつむきながらにっこり笑っている。


〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:参照プーブリウス・シュルス「チャンスは、きちんとした人すらもしばしば曲げてしまう」『警句集』320番[➽31番]。

オウィディウス:[➽世番]『恋愛治療』631-32行。ちょっとした刺激があると若者が恋に落ちてしまう比喩の一つとして、オウィディウスは使っている。

〖注解・比較〗
『恋愛治療』:どうやって愛を手に入れ持続させるかを教える『恋愛術』[➽2番]の続編で、恋をしている男性に向かって、たった一人の女性に熱を上げないための方法を指南している。全体の調子は『恋愛術』と同様に、機知とユーモアにあふれている。

泥棒:「筑波山 端山(はやま)繁山(しげやま) しげけれど 思ひ入るには さはらざりけり」(新古今和歌集 源重之1013)。「筑波山は人里近い山、草木の茂った山などが重なっているが、分け入ろうといちずに思い込んで入るわたしには邪魔にならないよ」(久保田淳 訳)。男が女の家に通おうとするが、その家には山が多くあるように従者・侍女の人目も多い。けれどもどうしても逢おうと思っていたので、とうとうチャンスを見つけることができ、人目を盗んでその家に立ち入り、女の部屋に行き着いた。男は、その喜びを女に向かって告げている。


◇愛のエンブレム◇ 65
Read more
◇愛のエンブレム◇ 題銘一覧(邦訳版)
Read more
◇愛のエンブレム◇ 題銘一覧(英訳版)
Read more
エンブレム集抄訳
Read more
◇愛のエンブレム◇ 図書検閲済
Read more
◇愛のエンブレム◇ 124
Read more