◇愛のエンブレム◇ 40

PLANTÆ RIGATÆ MAGIS CRESCVNT.
Quod teneris herbis genitabilis aura Fauoni,
Perque æstum irriguæ lenior imber aquae:
Hoc in amore fauor est mutuus: hinc alimenta
Sumit, & ad frugem protinus ille venit.
水をあげた植物は大きく育つ。
柔らかな葉をはぐくむの西風の気✒や、
暑いさなかに水を撒くしっとりとした雨にあたるもの、
それは愛においては、互いに交わす好意。好意があると、
愛は滋養を摂取し、すぐに実を結ぶようになる。
愛は恵みによって育つ
若くてやわらかい芽への水やりに、私たちはしばしば気を配る。
芽は水をもらって成長し、かぐわしく生い茂るようになる。
同じように愛に恵みが施されると、それだけやさしい愛が養われ、
ついには愛の実が味わえるようになる。
❁図絵❁
アモルが弓を杖にして腰をかがめながら、庭園の若草にジョウロで水をていねいにあげている。この庭の左側には入り口があり、ここが<囲われた庭>(愛の象徴)であることがわかる。
❁参考図❁

ヤーコブ・ハルレンウィーン (Jacobus Harrewijn)「アントワープのルーベンス邸」1692年
ルーベンス邸の<囲われた庭>は、方形の周遊路で三重に囲まれている。アントワープ市にはオットー・ファン・フェーン通りが今でもある。その通りの北側の次の通りはワッパー通りという。ワッパー通りの中程にある一邸宅に1610年から26年間、フェーンの弟子にして、愛の主題で多くの作品を書いたルーベンスは住んでいた。
〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:
典拠不記載:
〖注解・比較〗
西風の気:春になると西から風が吹き、花が咲く。たとえば、野のニンフであるクローリスを西風が陵辱すると、ニンフの吐息から花々があふれ出るといった神話がある(オウィディウス[➽世番]『祭暦』5巻193-213行[➽10番])。なお西風の気が生み出すという表現は、ルクレーティウス『事物の本性について』(1巻11行[➽9番])で、春の現象の一つとして言及されている。
好意:「いはざりき 今来むまでの 空の雲 月日へだてて もの思へとは」(新古今和歌集 1293)。「あなたはおっしゃいませんでしたよ、「すぐ行こう」と約束はしましたが、そののち見つめている空の雲が月や日を隔てるように、長い月日物思いをせよなどとは」(久保田淳 訳)。貴男は私にいいませんでした。「まもなくそちらに行こう」とは。でも私はそういわれたと思い、貴男を待っていました。待っていると月に雲がかかり、何かの事情で今日は来られないのかと好意的に解釈しました。そして雲が月を隔てるように、貴男がいらっしゃらない月日が過ぎていきました。そう、貴男はおっしゃいませんでした。長い月日、逢わない歎きを私にせよとは。ここで女は、男に対して自分をないがしろにする恨みをぶつけるのではなく、そういう男であっても男にいまだに好意を抱き続けていることを明かしている。好意は愛を育むのである。
