◇愛のエンブレム◇ 44

DVLCES AMORVM INSIDIÆ.

Ludendo capimur, bibimus ridendo venenum,

Atque iocos inter vincula miscet Amor.

Si timeas laqueos, & si te vincula terrent,

Terreat & lusus luctaque; liber eris.

愛の罠は楽しい。

私たちは遊んでいるうちに捕まって、笑っているうちに毒を飲むと、

アモルが冗談混じりに縄をかける。

だがもしも君が縄の輪に怖じ気づき、紐に身の毛がよだち、

いたずらや悪ふざけが怖いなら、君は捕まることはないだろう。

ふざけていると本気になる

 愛の罠は巧妙で、冗談であるかのように

ふざけていると、ふいに恋人をしっかりと捕らえる。

知らぬまに、結局は愛の虜にされてしまう。

だから愛の罠を避けたいのなら、愛とふざけあってはいけないのだ。


❁図絵❁

道ばたで一人のアモルが、木陰にいる別なアモルの首に縄をかけようとしている。木陰のアモルの左脚はもうすでに縄で樹に結ばれていて、木陰から離れられないようになっている。

❁参考図❁

ハブリエル・メツゥ (Gabriël Metsu)「闖入者」1660年頃

 軍人が女性だけの部屋に入り込んでいる。そのお目当ては画面中央のベッドにいる女性だ。この軍人を、侍女が笑いながら押しとどめている。侍女の視線は、鏡と小物入れが置かれたテーブルでメモを読むもう一人の女性の方に向いているが、この女性も笑いを浮かべている。男性の惚れぶりの大きさがわかる。画面の前面には仔犬と消えたロウソクがある。通例では仔犬は忠誠、消えたロウソクは貞操の象徴だが、脱ぎ捨てられた女性の服(画面右)やサンダル(画面中央)からすれば、この軍人は女衒の罠にかかった男性の哀れな姿だと推測できる。


〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:

典拠不記載:

〖注解・比較〗罠:「足柄の 彼面(をても)此面(こても)に 刺す罠の かなる()しづみ ()(あれ)(ひも)解く」(万葉集 巻14 3361)。「足柄山のあちこらにしかけた罠のようにとどろく、人の噂が静かな間に、あの子と私は紐をといて寝るよ」(中西進 訳)。足柄山では獲物を捕らえるために罠があちこちに仕掛けられ、獲物が罠にかかると鳴子(なるこ)が音を立てて知らせてくれる。あの音を人の噂にたとえれば、まだ噂が立たないうちに、俺はあの娘の着物の紐を解いて寝るのだ、という。あるいは、山に引きつけて考えると、獲物が罠にかかるまでの時間を使って、自分がものにした娘と寝るのだ、とも解釈できる。ここでは罠とは、男を捕まえ困らせる噂であって、娘を好きになってしまうように誘うきっかけではない。


◇愛のエンブレム◇ 65
Read more
◇愛のエンブレム◇ 題銘一覧(邦訳版)
Read more
◇愛のエンブレム◇ 題銘一覧(英訳版)
Read more
エンブレム集抄訳
Read more
◇愛のエンブレム◇ 図書検閲済
Read more
◇愛のエンブレム◇ 124
Read more