◇愛のエンブレム◇ 25

HABET SVA CASTRA CVPIDO.

Ouid.   Militæ species Amor est, discedite segnes:

Non sunt haec timidis signa tuenda viris,

Quis nisi vel miles, vel amans, & frigora noctis,

Et denso mistas perferet imbre niues?

アモルとともに城塞を守る。

オウィディウス   愛とは戦いの一種だ。ぐずぐずするな、さあ進め!

  臆病者は愛の軍旗を守ってはならないのだ。

兵士か恋人でなくて、いったい誰が、夜の寒さと

  豪雨混じりの雪に耐えぬくであろうか。

戦いのない愛はない

 アモルが陣営を整える。陣の兵士は恋人たち。

かれらは見張り場で日夜、監視を行ない、

暑さ寒さもなんのその。

嫉妬には守備体制をとっている。


❁図絵❁

 ローマ時代のヘルメット、腕章をつけ、軍旗を握るアモルが城塞の外に立っている。手前左の城塞にこもる兵士たちは、その心臓がアモルの矢で打たれている。右奥の城塞には蛇の頭髪をし蛇を握る女たち(嫉妬の象徴)がいる。アモルが握る軍旗(ラテン語signum)は、兵士たちが戦場で集合する地点などをあらわすためのもので、旗の頭頂には目のついた左手(おそらく警戒の象徴)、その下には円盤(ラテン語philarae)が数枚付いている。ただしアモルの軍旗には、円盤の最上段に、花輪で囲まれ二本の矢でX型に射られた心臓[➽24番]がついている。

❁参考図❁

ハブリエル・メツー (Gabriel Metsu)「若い女性を訪問する兵士」1660-61年 (ルーブル美術館 蔵)

 オランダ独立戦争に続いて英蘭戦争を戦っていたオランダでは、男性市民が兵士として参戦した。 豪華な暖炉のある一室で白のサテンと黒の服(おそらくビロード)をまとった女性は奥ゆかしく兵士の方を見つめている。兵士はサーベルを物置台にきちんと置き、つば付き帽子をとってやはり女性を見つめている。


〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:実際にはオウィディウス[➽世番]『恋の歌』1巻9歌1行。兵士が勇気と注意をもって城塞を守る姿を、男が恋人を守る姿にたとえている。この歌は「恋する男はみんな闘っている」で始まっており、「城塞を守っている」のは恋する男。
オウィディウス:1-2行目は『恋愛術』2巻233-234行[➽2番]。この箇所で詩人は、どのようなつらいことがあっても惚れた女には付きまとえと勧めている。3-4行目は『恋の歌』1巻9歌15-16行。この第9歌は、恋する者は兵士であるという主題で、恋する者を兵士の義務・行動に重ね合わせており、フェーンの引用は原意を忠実に反映している。

〖注解・比較〗
嫉妬:➽26番
『恋の歌』:作者自身が恋する身となった体裁で、恋愛によって受ける苦悩を自伝的に歌った詩集。各詩の形式は、プロペルティウス[➽14番]やティブルスが用いているエレギーア形式で、末尾の行で全体を締める歌い方になっている。

耐えぬく:「笹の葉に 置く初霜の 夜を寒み しみはつくとも 色にいでめや」(古今和歌集 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 663)。「笹の葉の上にできる初霜は、夜が寒さのためにそのまま葉の上で凍りつき離れないが、だからといって笹が紅葉するわけではない。そのように、私の身に恋心がしみ入って離れなくとも、その恋心をけっして表面にはあらわさず、他人に絶対知られないようにする」(大意)。恋心が知られてはまずい関係にあるとき、恋する男は四六時中、相手のことを思いながらも、自制と忍耐を可能なかぎり働かせて、一瞬たりともその恋心が外に漏れないように警戒をしている。


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