二元対立の英語感覚◆《確定⇔不安定》現在進行形:目下継起
現在進行形:目下、間欠的に起こる動作
英文法の用語は、よく考えられて日本語に訳されていますが、なかには誤解をもよおすような訳語もあります。後で述べる「所有格」などその典型ですが、「現在進行形」もそのひとつです。もしもこの訳語どおりにとるなら、次の英文はどういう意味になってしまうのでしょうか。
(1) My husband is always losing a key for our car.
夫はいつも車の鍵をなくす。
現在進行というなら、夫は、いま現在、鍵をなくそうとしていることになってしまいます。もしも今現在において「鍵をなくしている」ということが進行しているとすると、夫も妻も、車に乗ってどこかに出かけることはできません。この文の意味は、いつも鍵をどこに置いたのか忘れる癖があるということです。したがっていま自分の目の前で起こっている現在進行中のことでなくともよいのです。
ここで注意すべきは、現在形との対比です。もしも現在形で、
(2) My husband always loses a key for our car.
というと、現在形はちょっとやそっとでは動かせない事実ですから、夫にはどういうわけか昔から鍵をどこかに置き忘れる癖があることになります。ところが現在進行形を使った場合の(1)には、ちょっと思い出せる限りの今までも、そしてこれからの近い将来においても、夫は鍵を置き忘れるということです。(1)が暗示しているのは、このご主人の鍵忘れは昔からずっと続いているのではなく、ここ最近のこと(ちょっと思い出せる限りの今まで)であって、うちの旦那もぼけたものだという、奥さんのため息が聞こえてくるのです。
現在進行形を現在形と対比させると、現在形は性格・習性から行ってしまう安定した動作、これに対して現在進行形は、たまたまここ最近にみられる一時的な動作であって、その動作はいつ崩れるかわからないのです。だから現在進行というよりは現在の時点を中心にして、ある動作が断続的に何度も行われるという継起なのです。だからいつそれが終了してもおかしくない現在継起形とよんだほうが、be 動詞ingという形によってあらわされる内容が伝わってくるのではないでしょうか。
だから(1)現在進行形は、(2)現在形のような奥さんのため息が聞こえてきても、その裏には、鍵の忘れは昔から続いている旦那の習性ではなく、ここ最近に起こっていることなのだから、鍵の忘れという動作から脱却して、ぼけずにきちんと鍵をいつも持っていてほしいという気持ちもそれとなくうかがえるのです。
ですので(1)に戻れば、これは現在進行というよりも、現在でも断続的に起こる継起形なのです。

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