二元対立の英語感覚◆《確定⇔不安定》be going to do と will doの違いは、未来への近さではありません
be going to do: そうやる準備がそれなりにある
will do:いま思いついてやる気になる
be going to動詞 は近い将来、他方 will 動詞 は遠い将来の動作をあらわすというのが、学校文法書では、この2つの英語の違いを説明する定番でした。しかしwill 動詞 が近い将来の動作をあらわすケースもあり、そもそも将来の近い・遠いは何を基準にしていうのか曖昧です。動詞の前の be going to と will が示す意味の違いは、現時点からの未来の動作の時点の遠近ではなく、客観・主観という二元対立から説明できます。英語では客観の文が基本で、そこに主観を入れたい場合には助動詞を加えます。ということは、be going to動詞 はこれから行おうとする客観的な動作を示しています。それに対して、助動詞 willの入った文は、これから行おうとすることに主観、それもwill の基本的な意味は、主観的な意志にもとづく100%の確信です。
ですので次の3つの文(B, C, D)には大きな違いがあることがわかります。
A: This package has to be there tomorrow.
この荷物、明日には届いてなきゃならないんだ。
大丈夫、UPSで送っておくから。
→B: Don’t worry. I’m sending it by UPS.
→C:Don’t worry. I’m going to send it by UPS.
→D:Don’t worry. I’ll send it by UPS.
Bは、「送る」という動作の流れのなかにすでに浸っているわけですから「確実に送るよ」というニュアンスがあり、Aさんは安心できます。CはUPSの事務所の電話番号、伝票の書き方など知っているから、「送っておくよ」というので、Aさんはそこそこ安心できます。Dは、明日までに到着という条件を聞いて、その場でとっさに、「じゃあ、送っとくわ」といっているだけで、あとから都合が悪くなって、UPSからの発送できなかったという残念な結果をAさんは耳にするかもしれません。
ですから誕生日がこの土曜日だというときには、カレンダーの一週単位の帯の流れの中に誕生日が入っていて、今日はその週の火曜日だとすると、帯の最後にある日曜に向かって時間は流れているので、
It‘s going to be my birthday on Saturday and … I thought maybe you’d like to come to my party.
土曜日は僕の誕生日なんだなあ。パーティがあるけどいらっしゃいませんか。
となります。ところがこっちはもうすでに予定が手帳に書き込んであり、金曜日の晩に出かけることになっていて、日曜の夜に戻るつもりだという場合には、
I’m leaving Friday night and won’t get back till Sunday evening.
金曜の晩に出かけることになっていて、日曜夕方まで戻れないの。
となります。
次の文でも、早く帰ってきてねといわれて、どちらが聞き手は安心できるかといえば、
I am going [to go] back home as soon as the English class is finished.
I will go back home as soon as the English class is finished.
当然、am going の方です。
ラジオのパーソナリティがこういって番組を始めます。
Tonight, we are going to review a new Takeshi’s film.
今夜は、タケシの新作の講評をやります。
いま、ふと思いついたのではなく、あらかじめ準備しているからこういえるのです。
そしてディレクターがコマーシャルの時間のサインを出しているので、パーソナリティは
I’m going to have to break away now. It’s time for a commercial.
ではここでちょっと休憩です。お知らせの時間です。
これも思いつきでいっているのではありません。目の前に開いてある脚本と、その隣ある時計の秒針をみて、こういっているのです。
しかしもしもスピルバーグの映画の話をしていて、急にそこでタケシの座頭市を思い浮かべ、タケシのアクションものの講評をしようというなら、
We’ve had enough talk about Spielberg films. Now we will review a new Takeshi’s film, The Blind Swordsman.
スピルバーグ映画についてはこれぐらいにして、さて、武の新作「座頭市」の講評に移りましょう。
というようにwillを使うことになります。あるいは、ディレクターからのサインを見落としていたとはた気がついて、いきなりではコマーシャルというときには
I’ll break away now for a commercial. We’ll be with you in a minute.
あ、ここでお知らせです。ではまた一分後に。
となります。
なぜ will が思いつきになるかといえば、will の元々の意味は「意志」で、自分で自分の意志が動かすのが will です。will が主観的な100%の確信という意味をもつのも、客観的な何かがあるわけでもないのに、自分で自分の意志を動かして(つまり主観的に)、willに続く動詞の動作に確信を抱くということだからです。
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