◆二元対立の英語感覚◆《同時⇔異時》:and と or


二つの事柄が同時に起これば and
どちらか一方が起こるのであれば or

私たちは大騒音のなかにいても一時的にその音を聞かない心の状態にすることができます。また大騒音のなかで「うるさいな」という感情も脇においておくことができます。そういうことができる人を英語でいうと、

(1) Some people can concentrate in the midst of commotion, putting aside noise or inner feelings.
(2) Some people can concentrate in the midst of commotion, putting aside noise and inner feelings.
騒がしい混乱の中にあっても、騒音自分の気持ちを遮断できる人がいる。

「騒音自分の気持ち」なので、(1)の or が正しく、(2)の and は正しくないのでしょうか。実は、(1)も(2)もどちらも同じように見えますが、(1)と(2)では意味が異なります。

どちらも同じように見えますが、この場合正しいのは(1)です。なぜでしょうか。別な例で考えてみましょう。

(3) Visitors should not drink or eat with patients in the ward.
(4) Visitors should not drink and eat with patients in the ward.
見舞いの訪問者は病院内の病室で、患者と飲んだり、食べたりすることはできません。

(3)では見舞いの訪問者は病院内の病室で、患者と一緒に何かを飲んだり、何かを食べたりすることはしてはなりません。ところが(4)になると、「飲んで食べること」がいけないのであって、一緒に飲んでも食べなければOKですし、逆に一緒に食べても飲まなければOKということになります。つまりnot X and YはXとYが同時あるいは連続して起こってはならないということをあらわします。これに対してnot X or YはXとYのどちらか一方でも起こってはならないということなのです。

X and Y 同時に起こる

X or Y どちらか一方が起こる

これがわかると「飲んだら乗るな」という交通標語はどう表現したらよいでしょうか。飲むこと(drinking)と乗ること(driving)とをandでつなげたらよいのか、orでつなげるべきなのでしょうか。

警察は、酒を飲むことは禁止できませんし、運転することも禁止することができません。しかし、酒を飲んで運転することは禁止しています。「飲んで→運転する」が連続していますから、

(5) Don’t drink and drive.
飲んだら乗るな

では18歳未満の未成年に対して(5)でよいでしょうか。日本の法律では18歳未満の飲酒も運転も禁止されています。両方同時に成り立つ必要はなく禁止されていますから、orを使うことが正解です。

(6) People under the age of 18 are not permitted to drink alcohol or drive in Japan.
18歳未満の未成年者は飲酒運転日本では禁止されている。

こうしてみると、道ばたで売っている果物野菜スタンドは、次のようになります。

(7) When you drive in rural areas in Japan, you will see roadside vendors selling fruit or vegetables.
日本の田舎道をドライブしていると、道ばたには果物野菜スタンドがあるのがわかる。

最初の例(1)と(2)に戻れば、外からの騒音自分自身の内的気持ちの両方を同時に遮断できる人の場合には、and. これに対して、どちらか一方ができる人がいるといいたい場合には、or を使うのだとわかります。

さらにもう一つ例をあげると、

(8) What states in the US is it illegal to talk on the phone while driving?
アメリカではどこの州で、運転中に携帯電話をすると罰せられるか。

運転しながら、電話をするが同時ですから、while+動詞ing の形にする代わりに、

(9) What states in the US is it illegal to drive and talk on the phone?

でも可能だとわかります。