◇愛のエンブレム◇ 1

Senec.                               AMOR ÆTERNVS.

Nulla dies, tempúsue potest dissoluere amorem,

 Néue est, perpetuus sit nisi, verus Amor,

Annulus hoc anguisque tibi curuatus in orbem,

 emporis æterni signa vetusta, notant.

セネカ              愛は永遠である。

いかなる日もまたいかなる時も、愛を氷解させることはできず、

 そしてもしその愛がどこまでも続かないなら、本物ではないということを

あらわしているのは、輪とその輪にそって体を曲げる蛇

 永遠の時をあらわす古代のシンボルである。

愛は永遠である

時にも滅ぼされない愛、真の愛を僕たちはめざすべきだ。

永続しないのでは、真の愛とはいえない。

終わりのない輪となっている蛇は、終わりのない時をあらわし、

輪中の愛は、果てることとは無縁なのだ。


❁図絵❁

空中で蛇が尻尾を咬んで輪を作り、その輪の中で、アモルが矢筒を腰掛けにして、弓と矢をそれぞれの手に持ちながら堂々と座っている。

❁参考図❁

アブラハム・ブルーマールト「アモルとプシューケーの結婚」1595年頃
王女プシューケーと愛の神アモルは相思相愛であった。ところがある時、二人に離ればなれになり、ある事件から王女は永遠の眠りにつく。王女を捜し当てた愛の神は、自分の矢でつついて王女を起こし、王女と共に天上に昇り、晴れて結婚をする。画面中央のテーブル奥右に王女が、その左に翼を生やしたアモルが並んで座っている。二人の上には<名声>がラッパを吹き鳴らし、空中からプットーたちがお祝いの花を撒き散らしている。

〖典拠:銘題・解説詩〗
セネカ:[➽世番]典拠未詳。参考トマス・アクィナス「神の愛は永遠である。」(『神学大全』第1部第20問2節2)。ここの場合のように、出典が明記されていても、フィーンの誤解であったり、キリスト教の文脈からはがして恋愛の文脈に差し込んだと推測されるものが本書では散見される。
典拠不記載:典拠不記載のものが本書には数多く掲載されているが、その多くはフィーンによる創作とみなして間違いない。
〖注解・比較〗
:ウロボロスといい、古代エジプトの神刻文字のひとつで、永遠をあらわすと考えられていた。1419年に発見された、エジプト神刻文字を説明するホラポッロ『ヒエログリフ集』(原典ギリシア語)がラテン語などに翻訳され、ルネッサンスから17世紀にかけて知識階層に大きな刺激を与えたが、ウロボロスはそうした神刻文字のひとつとして、『ヒエログリフ集』の冒頭で説明されている。
永遠:「長き世を 頼めてもなほ 悲しきは ただ明日知らぬ 命なりけり」(『源氏物語』浮舟)。「常永久(とわに)に変わらぬ愛を ふたりの間に誓ってみても やはり悲しいのは人の身よ 明日をも知らぬ命なり ふたりのはかない恋と命よ」(瀬戸内寂聴訳)。匂宮が、かつて自分を振った浮舟を再度探しだし、逢瀬を重ねたときに詠んだもの。

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